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抗生物質を何故ブドウ糖に溶かすのか? [研修医教育]

 最近、看護師さんも沢山見て頂いている事が分かったので、ちょっとした診療の疑問に答えるべく、研修医教育の記事を増やして行こうと思います。何でだろ〜と思っていても、なかなか聞けない事が解決すると良いと思います。何より自分の復習になりますから!!

 抗生物質など色々な薬を点滴で投与する場合、生理食塩水で溶解する事が多いです。例えば、「ユナシン1.5gを生理食塩水100mlに溶かして1日4回投与」などです。
 別の先生は「ユナシン1.5gを5%ブドウ糖100mlに溶かして1日4回投与」と言う指示を出します。

 同じ薬なのに、何で溶解液を変えるのでしょうか???

 これはナトリウムの投与量を気にしているためです。何も考えていない人は(いないと思いますが)20歳のスポーツマンだろうと、90歳で体重が30kgぐらいしかない寝たきりのおじいちゃんだろうと、透析患者さんだろうと心不全だろうと同じように生理食塩水で溶解します。

 以下に何故注意しなければならないかを3つ記載します。まずNaCL(塩化ナトリウム)1gは17mEqです。ナトリウムは女子高生、カリウムは女子中学生(KCLが1gで14mEq)と覚えましょう。女子高生は17歳、女子中学生は14歳と言う訳ですね。女子である必要は別にないですが(^.^)、私が考えたのではなく、有名な輸液の専門の先生の本に書いてありました(こう言う先生結構好きです)。

(1)抗生物質はナトリウム塩です。
 たいていの抗生物質は気にしなくても良いですが、ホスミシンと言う抗生物質は特にナトリウムが多いです。1gあたり14.5mEq含まれています。
 ホスミシンは構造が簡単でアレルギーがない?のでたまに使いますが、ホスミシン1gを1日3回投与すれば、43.5mEq投与になります。
 またユナシン1.5gにはナトリウムが5mEq含まれているそうです。

(2)溶解液に含まれるナトリウム量に注意をしましょう。
 一つの抗生物質を100mlの生理食塩水で溶かして点滴(のが一般的です)すると、1回15.4mEqのナトリウムが入ります(生理食塩水はNaCLが154mEq/Lの溶液です)。ユナシンを1日4回投与すると61.6mEqのナトリウムが入ります。
 ホスミシン1gを生理食塩水100mlに溶かして投与すると、1回30mEq程度入ります。

(3)成人の必要トリウム量は、、、、
 だいたい1日1ー2mEq/kgと言われています。50kgの人でも50mEqもあれば充分です。80歳のおばあちゃんであれば、、、、50kgもないでしょう。ナトリウムを全く投与しなくても大丈夫と言う文献を読んだ事もあります。
 よって、ユナシン1.5gを生理食塩水100mlで溶解して1日4回投与すると、それだけで1日必要量を投与してしまいます。他にも本体の点滴、経管栄養等、、、ナトリウムを含んだものを投与していますから、、、、ナトリウムが過剰になります。心不全、透析患者さんなどにはナトリウムの過剰は良くありません。
 不勉強な先生は、ちょっと重症になった患者さんが浮腫んでくると、何も考えずに利尿剤の投与を開始しますが、重症な患者さんは、抗生剤、魔法の薬ミラクリッド(これは別記事にする予定です)、昇圧剤などなど色々な薬を投与され、その度にナトリウムが入れられているのです。

 よって体の小さいお年寄りとか、透析患者さんとか、心不全の患者さんなどでは、抗生物質は5%ブドウ糖で溶解する訳です。
 また、昇圧剤はこう言った患者さんに投与される事も多いので、だいたいブドウ糖で溶解する訳です。もし、その場にブドウ糖がなければ、生理食塩水で作っても良いです(緊急性がある訳ですから)。時間5mlの投与であれば、1日120mlですから、24時間使っても18.5mEqです。大した量じゃありません。いわんや短時間おやです。

(4)生理食塩水でなければダメな薬剤もあります。
 ブドウ糖に溶かせない薬もあります。今思いつきませんし、調べてもヒットしませんでしたが、、、、その場合には生理食塩水を50mlとかにすべきです。
 が、フェニトインと言う抗痙攣薬は生理食塩水に溶かすと沈殿が出来ます。よって大量の生理食塩水に溶かして入れます。500ml以上に溶かします。この薬をどうしても点滴で入れなければならない時には、、、、77mEq入りますから、他でナトリウムを制限するか、可能な限り経管栄養で入れるか、、、、結晶が出来ても良いから100mlで入れるか(一般的に大丈夫と言われていますが、薬剤部と闘う必要があります(^.^))、利尿剤を併用するか、、、、難しいです。
 その他、シスプラチンと言う抗がん剤も生理食塩水でないとダメです。

 点滴の指示を出す時には、こう言った事にも注意しましょう。

 ちなみに、mEqとは、ここにありますが、「メック」と呼びます。点滴などの分野では食塩5gとか言う事はあまりありません。NaCL5gは(女子高生でしたから)、85mEqのNaとCLが含まれていると言う訳です。

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yangt3

こういう記事は、本当によいですね.
シリーズでお願いしたいと思います.
リクエストとしては
・輸液のカリウムの話
・ガンマの話
なんかお願いできたらうれしいです.
by yangt3 (2009-07-09 15:06) 

Kim

yangt3さん、コメントありがとうございます。

リクエストありがとうございます。頑張って書いてみます!

by Kim (2009-07-09 15:29) 

pulmonary

私の読んだ本はNa+K(17+13)で足したら30mEqと覚えましょうと書かれていました。
生食100mlに抗生剤を溶いて1日4回いったら、それだけで食塩4g弱。高齢者や心機能低下した患者さんにはかなり負担になります。それに維持液や外液が入って、入院後しばらくして肺が真っ白で呼吸が悪いと病棟に呼吸器内科医が呼ばれます。ARDSか肺炎かと言われるのですが、どう見てもovervolumeによるうっ血です。よく見られる光景です・・・・。(外科系の先生に有意に多い気がしますが、さすがはKim先生ですね。)
by pulmonary (2009-07-09 21:16) 

Kim

pulmonaryさん、コメントありがとうございます。

私はyangt3さんに1年目の時にこのことを教わったので、、、、初めて一緒に受け持たせてもらった患者さんで、ブドウ糖を使いました。今まで生理食塩水だったのに、、、と疑問に思った事を覚えています。

貴重な指導に感謝しています。研修医の時に適切な事を教える事は重要な事ですね。

by Kim (2009-07-09 21:39) 

通りすがり

同じ薬剤でも、生食に溶かすのと5%ブドウ糖に溶かすのでは、1時間経過後の力価に変化が生じる抗生剤もあります。ブドウ糖だと力価の低下が大きいものをいくつか見たことがあります。
ブドウ糖を好んで使っている先生には、この事実を知らない人が多いように思います。ナトリウム負荷を抑えても、力価が低下していたら本末転倒では?しかも最近は十分な血中濃度を維持することが大事とされてますので。
by 通りすがり (2015-04-30 12:13) 

Kim

通りすがりさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申し訳ありません。

なるほど、生食の方が力価が高い場合もあるという訳ですね。

色々考えなければならないので大変ですが、抗生剤を溶かす溶液一つとっても奥が深いという事は知っておかねばなりませんね。

これからもご指導よろしくお願いいたします。

by Kim (2015-05-04 19:56) 

taro-u

初めてコメントします。
わたくしは あまり病院へは行くことが無いのですが
たまに入院見舞いに行ったときなど 看護士さんが
点滴に薬を入れる光景は 見た事があります
何気ないこと そのこと1つがどんな影響をするかを
気に留めなくてはいけないこと だたのですね
by taro-u (2016-06-10 13:58) 

Kim

taro-uさん、コメントありがとうございます。

点滴を何メインで作るかと言うのはメイン料理を何にするのか?と言うのと似ているのかも知れません。色々なことを考えてやっているので、温かく見守ってくださいね。


by Kim (2016-06-10 14:10) 

kaku0106

通りがかりの薬剤師です。Naの話、大変勉強になります^ ^
文脈にあった、フェニトインは非水溶性ですので、実は希釈そのものがタブーでして、よくて25倍まで、とメーカーから返事をもらったことがあります。うろ覚えで申し訳ないですが、、ホストインという薬は安定なので希釈も可能です。
by kaku0106 (2017-08-17 12:55) 

Kim

kaku0106さん、コメントありがとうございます。

参考になって嬉しいです。

フェニトインは希釈してはいけないというのは知っていますが、希釈せずに50mg/分以下の速度で注射するというのが、どのような方法で行うのか?薬剤師さんも実際の現場を見ていただければ幸いです。

ホストインは良い薬なのでしょうが高いのでしょうね。ガイドラインでも最近はアレビアチンよりホストインが推奨されているようですが。

by Kim (2017-08-18 07:27) 

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