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Good bye!アトロピン [CPRの基礎]

 「今ショックを行いましたので、2分間蘇生を続けます。胸骨圧迫頑張って下さい!疲れたら交代お願いします。次に使う薬の準備をお願いします。、、、えっとア、アド?、、、アトロピン1mgの準備を、、、」
 「アトロピンじゃなくてアドレナリンでは?」

とややこしい?アトロピンが2010年版のコース(特にICLS)では使われなくなるかもしれません。

 以下では、英語を引用し、それを訳しています(かなり怪しい訳)。かなりマニアックな資料(でも本当は基本的な資料なのですが)なので、救急オタクの人だけ読んで下さい。普通の人は以下の通りで結構です。

 アトロピンが有効であると言う証拠がないので、2010年ガイドラインでは勧められていません。が害になると言う証拠もないので使っていけないと言う訳ではありません。

 2005年でも証拠に関しては同じだった(例えば小児のアルゴリズムにアトロピンはありません)のですが、そんなに副作用もないから使おうよ、、、、みたいな感じだったのでしょう。同じ資料を見ても結論が違ってくるのは面白いです。


 さてここからがオタク向け記事です。頑張って読みましょう!私は頑張って書きました!訳しました!

 AHAのガイドラインには以下のようにあります。

 Available evidence suggests that the routine use of atropine during PEA or asystole is unlikely to have a therapeutic benefit (Class IIb, LOE B). For this reason atropine has been removed from the cardiac arrest algorithm.

 今得られているデータによれば、アトロピンを無脈性電気活動や心静止にルーチンに使用する事は有効である可能性が低い(クラスIIb、LOE B)。よって、アトロピンを心停止のアルゴリズムから削除した。


 ルーチンとは、自動的に行われると言うような意味で、「私は合コンに参加する場合、ルーチンに香水をつけている」等と使います。よってルーチンでなければ良く、年上の人と合コンする場合にのみ香水をつけると言うような事は良い訳で、アトロピンを使ってはいけないと言っている訳ではありません。ここを間違えないようにしたいですね。

 AHAのガイドラインの別の所には以下のように書かれています。

Interventions Not Recommended for Routine Use During Cardiac Arrest
 Atropine
 Atropine sulfate reverses cholinergic-mediated decreases in heart rate and atrioventricular nodal conduction. No prospective controlled clinical trials have examined the use of atropine in asystole or bradycardic PEA cardiac arrest. Lower-level clinical studies provide conflicting evidence of the benefit of routine use of atropine in cardiac arrest.34,295–304 There is no evidence that atropine has detrimental effects during bradycardic or asystolic cardiac arrest. Available evidence suggests that routine use of atropine during PEA or asystole is unlikely to have a therapeutic benefit (Class IIb, LOE B). For this reason atropine has been removed from the cardiac arrest algorithm.

心停止中のルーチン使用が推奨されない処置
 アトロピン
 硫酸アトロピンはコリン受容体に作用する事により、減少した心拍数や房室結節の伝導を回復させる。心静止や徐脈性のPEA(無脈性電気活動)による心停止でのアトロピンの投与は前向き対象研究で検討されていない。心停止におけるアトロピンのルーチン使用は、エビデンスレベルの低い研究でさえ相反する結果が報告されている。徐脈性あるいは心静止の心停止において、アトロピンが有害であると言う証拠はない。現在の所、アトロピンを無脈性電気活動や心静止で使用することは治療上の利益がある可能性は低いと考えられる。よって、アトロピンは心停止アルゴリズムから削除された。


 しつこいぐらいルーチンと言う言葉が出てくる事に注意しましょう。

 全てのガイドラインの基となるCoSTR2010には以下のようにあります。

Other Drugs During Cardiac Arrest
 There is no convincing evidence that the routine use of other drugs (atropine, amiodarone, lidocaine, procainamide, bretylium, magnesium, buffers, calcium, hormones, or fibrinolytics) during human CPR increases survival to hospital discharge.

AtropineALS-D-024B
 In adult patients in cardiac arrest (asystole, PEA, pulseless VT, and VF) (out-of-hospital, in-hospital), does the use of atropine or atropine in combination with other drugs, compared with not using drugs (or a standard drug regimen), improve outcomes (eg, ROSC, survival)?

Consensus on Science
 Three studies (LOE 4)208–210 (total of 12 operating rooms, 2 catheterization laboratories, 2 out-of-hospital cardiac arrest patients, and 4 in-hospital cardiac arrest patients) documented improvement in survival when atropine was given to patients in asystole in combination with epinephrine208,210 and following induction with succinylcholine and fentanyl.209 One study documented improvement in ROSC (14% versus 0%) when atropine was given to adults in asystolic out-of-hospital cardiac arrest in combination with epinephrine and sodium bicarbonate, but none survived to discharge (LOE 3).211

 Three studies suggested that the use of atropine for treatment of cardiac arrest was not associated with any change in survival (LOE 2212; LOE 5213,214). Four human studies suggested that the use of atropine was associated with poor survival (LOE 4).83,215–217

Treatment Recommendation
 There is insufficient evidence to support or refute the use of atropine in cardiac arrest to improve survival to hospital discharge.

Knowledge Gaps
 Randomized placebo-controlled trials are required to define the role of atropine in PEA and asystolic cardiac arrest.

 長くなってすみません(オタク向けだから良いですね)。まずCoSTR2010の訳です。

心停止中に使用する他の薬剤(アドレナリンとかバソプレッシン以外)
 その他の薬剤(例えばアトロピン、アミオダロン、リドカイン、プロカインアミド、ブレチリウム、マグネシウム、緩衝剤、カルシウム、ホルモン剤、血栓溶解剤)をヒトの心停止中にルーチンに使用すると生存退院率が増加すると言う明らかな証拠はない。

アトロピン
 院外、院内を問わず、成人の心停止患者(心静止、無脈静電気活動、無脈性心室頻拍、心室細動)においてアトロピンやアトロピンを含有した薬剤の使用が、使わない場合と比較して、予後(心拍再開、生存率)を改善するか?

科学に基づく勧告
 3つの研究(12の手術室、2つの血管造影室、2つの院外心停止、4つの院内心停止)では、アトロピンがアドレナリンと共に心静止の患者に投与された場合、生存率の改善があったと報告されている。またサクシニルコリンとフェンタニールを用いた導入を行った場合も動揺に生存率の改善を認めた。アトロピンを成人院外心肺停止(心静止)患者に、アドレナリンと重炭酸ナトリウムと共に投与した場合、心拍再開率の改善を認めた(14%対0%)とする報告があるが、生存退院率はゼロである。

 心停止の治療としてアトロピンを投与する事は生存率に関連した指標のどれとも関連を認めなかったとする3つの研究がある。ヒトにおける4つの研究では、アトロピンの使用は生存率の低下と関連していたと報告している。

推奨される治療
 心停止患者の生存退院率を改善させるためにアトロピンを使用する事を支持する、あるいは禁止するのに十分な証拠はない。

今後の課題
 無脈性電気活動や心静止による心停止におけるアトロピンの役割を調査するためのランダム化された対照研究が望まれる。


 ERCのガイドライン2010には以下のように書かれています。

Atropine
 Atropine antagonises the action of the parasympathetic neurotransmitter acetylcholine at muscarinic receptors. Therefore, it blocks the effect of the vagus nerve on both the sinoatrial (SA) node and the atrioventricular (AV) node, increasing sinus automaticity and facilitating AV node conduction.
 Side effects of atropine are dose-related (blurred vision, dry mouth and urinary retention); they are not relevant during a cardiac arrest. Acute confusional states may occur after intra- venous injection, particularly in elderly patients. After cardiac arrest, dilated pupils should not be attributed solely to atropine.
 Asystole during cardiac arrest is usually due to primary myocar- dial pathology rather than excessive vagal tone and there is no evidence that routine use of atropine is beneficial in the treatment of asystole or PEA. Several recent studies have failed to demonstrate any benefit from atropine in out-of-hospital or in-hospital cardiac arrests244,453–458 ; and its routine use for asystole or PEA is no longer recommended.
 Atropine is indicated in:
• sinus, atrial, or nodal bradycardia when the haemodynamic condition of the patient is unstable (see Section 4g).

 アトロピン
 アトロピンは副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンをムスカリン受容体において拮抗する。それ故、アトロピンは洞結節、房室結節において迷走神経を遮断し(blocks the effect of the vagus nerve)、洞結節の自動能を増し房室結節の伝導を促進する。

 アトロピンの副作用は投与量に関係している〈複視、口渇、尿閉(and urinary retention)〉。(しかし)心肺停止中にこれらの副作用について考慮する必要はない。急性の錯乱状態が、特に高齢者で、静注後に起こるかもしれない。(なお)心肺停止後では、アトロピン単独で瞳孔散大を来たすことはない(dilated pupils should not be attributed solely to atropine)。

 心停止中に発生する心静止は、迷走神経の緊張が過剰になったと言うよりも、直接の心筋障害によるものが多く、アトロピンのルーチン投与が心静止や無脈静電気活動の治療に有用であると言う証拠はない。最近の研究では、院内、院外の心停止においてアトロピンの有用性を示した研究はなかった。よって、心静止や無脈静電気活動に対してアトロピンをルーチンに使用する事はもはや勧められない。

 アトロピンの適応は
・洞結節、房室結節、接合部性の徐脈で、患者の循環動態が不安定な場合(4g章参照)


 ERCは2005年度版ガイドラインでは以下のように記載していました。何といっぺんに3mg(つまり6アンプル)打てと言っていたのです!!しかし、この文章の前半は、アトロピンの適応が変わったのと一段落追加されただけで、後は同じです。

アトロピン

 アトロピンは副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンをムスカリン受容体において拮抗する。それ故、アトロピンは洞結節、房室結節において迷走神経を遮断し(blocks the effect of the vagus nerve)、洞結節の自動能を増し房室結節の伝導を促進する。

 アトロピンの副作用は投与量に関係している〈複視、口渇、尿閉(and urinary retention)〉。(しかし)心肺停止中にこれらの副作用について考慮する必要はない。急性の錯乱状態が、特に高齢者で、静注後に起こるかもしれない。(なお)心肺停止後では、アトロピン単独で瞳孔散大を来たすことはない(dilated pupils should not be attributed solely to atropine)。

 アトロピンの適応は
・心静止
・無脈性電気活動で脈拍数60/分未満
・洞結節、房室結節、接合部性の徐脈で、患者の循環動態が不安定な場合
である。

 心静止、無脈性電気活動で脈拍数60/分未満の成人への推奨されるアトロピン投与量は1回3mg静注である。徐脈治療におけるアトロピンの使用に関しては第4章fに記載がある。院内および院外心停止に対してアトロピンを用いた最近のいくつかの研究174,216-210は、その利点を示すことができなかった。しかし、心停止の予後は(本来)非常に重篤であり(asystole carries a grave prognosis)、一方で(and)アトロピン投与後に蘇生に成功したという逸話的な報告もある。この状況(心静止)においては(アトロピンは)有害ではなさそうである。


 新しいガイドラインをちょっと読んで、あれこれ変わった!!と喜んで、コースの内容を変更して混乱させると言うようなことは避けたいですね。アトロピンを使おうとする受講生に対して、アトロピンは禁忌になったんですよ!なんて言わないように注意しなかんて〜。

 私はアトロピンを使うのを辞めるつもりはありません。CoSTRに支持も禁止も出来ないとあるのですから!!

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yangt3

アトロピンを使わなくても責められないということですね.
何事もやはりシンプルが一番です.
by yangt3 (2010-11-07 14:38) 

Kim

yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。

推奨も禁止も出来ないと言うのは、本当は辛い所ですね。一体どっちなんだ!!と言いたくなります。

でも医学ってそういうのが実は多いんですよね〜。スレンダーなカテもそうなんじゃないでしょうか?細い方が良いに決まっている!と言う人もいれば、そんな細くちゃ何も出来ん!!と言う人がいたり、、、

by Kim (2010-11-07 15:26) 

くまくま

 KIM先生、お忙しい中先生が一生懸命時間をかけて書いて下さったものを、あっというまに読んで、勉強させていただきました、申し訳ないぐらいですが・・・   アトロピン結構私もお世話になっているので、ほんと読んでいて混乱しました。 難しい。 急にICLSの内容変えないほうがよさそうですね。   
by くまくま (2010-11-07 22:47) 

くまくま

  まじめな話の際に、ちょっと不謹慎なコメントですが(笑) 合コンの香水の例えは面白いですね。 
by くまくま (2010-11-07 22:52) 

Kim

くまくまさん、コメントありがとうございます。

英語は得意ではありませんが、それほど時間をかけていません。あっと言う間に
読んで頂くために日本語にしていますので、お役に立てて幸いです。

ICLSは日本語テキストが改訂されるまでは今のままが良いと思っています。

合コンに香水ヒットしたようでうれしいです(^_^)。

by Kim (2010-11-08 08:34) 

Nao

はじめまして。 2010 ACLS Guideline なんて検索していたらこのサイトにたどり着きました。 只今パラメディックですが、さらに知識を深めるために、参加させていたぢて、いろいろ質問などさせて頂きたいと思っています。 よろしくおねがいします。
by Nao (2010-11-28 12:28) 

Nao

アトロピンをPEA、またアシストリーに使わなくなったということでアトロピンは大人のBradycardiaにしか使われなくなったわけですね。
もう一つ今回のガイドライン変更で聞いたのがアデノシンのSVTとVentricular Tachycardiaへの使用です。 なるほど、アデノシンで反応無ければV-tachということになるわけですが、それではV-tachの場合にまずアミオダロン投与だったものがこれからはまずアデノシンになるのだろうかと思ったりしています。 (実はまだガイドラインを読んでいないのでここが知りたいところでもあります。) フュージョンビートがとらえられてV-tachだとはっきりしているものにはAmioを、となるのでしょうか。

by Nao (2010-11-28 12:49) 

Kim

Naoさん、コメントありがとうございます。

私が知る範囲では変わりはほとんどないそうです。アメリカでアップデートを聞いてきた先生が言ってました。

アデノシン関係については後日記事をアップしますので、お楽しみに!質問ありがとうございます。

by Kim (2010-11-28 18:06) 

nomnom

はじめまして。AHAの症候性徐脈のアルゴリズムに、”アトロピン(the recommended atropine dose)は徐脈に対 して 3~ 5分毎に 0.5 mgを静注し、総投与量は 3 mgまでとする。 0.5 mg未満の硫酸アトロピン投与はさらに心拍数を低下させるといった、 逆説的な結果を引き起こすかもしれない”と記載があります。高度房室ブロックの際に少量のアトロピンを点滴静注する(通常はこの様な使用法はしませんが)指示を見た事がありました。万一徐脈が増悪した際などに訴訟沙汰になる可能性はありませんか?
by nomnom (2017-05-08 14:01) 

Kim

nomnomさん、コメントありがとうございます。

現在は添付文書やガイドラインに反したことをすると裁判で負ける可能性が高いですが、高度房室ブロックはそもそもアトロピンどうこうではないでしょうから、その事で訴えられることはないと思います。なぜ経皮ペーシングを使わなかった!と言われることはあるかも知れませんね。

by Kim (2017-05-08 14:42) 

nomnom

ご返信有り難うございます。 精神科単科病院の当直中に慢性的な完全房室ブロックの患者さんへの指示で、徐脈時に硫酸アトロピン1A+生食100mlを数時間で点滴する様な指示が有り質問させて頂きました。”0.5 mg未満の硫酸アトロピン投与はさらに心拍数を低下させるといった、 逆説的な結果を引き起こすかもしれない”と記載されており使用はしませんでしたが、この件に関してまして、何かコメントいただければ幸です。経皮ペーシングなどの設備はありません。
by nomnom (2017-05-08 16:18) 

Kim

nomnomさん、精神科の病院には身体を診られる医師がいないのでしょうから大変ですよね。

完全房室ブロックであれば、アトロピンは影響しないでしょうから、きちんと投与しても、指示のように点滴しても何も起こらないと思います。

循環器内科の先生に診てもらうのが良いでしょうね。


by Kim (2017-05-10 12:49) 

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