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鼻カニューラは口呼吸の人には意味がないのか?? [研修医教育]

 この記事で質問頂きましたので調べてみました。ありがとうございます!!

 私も「鼻カニューラは口呼吸の人には意味がない」と思ってきました。調べてみたら、、、、、私の知識が間違いであった事が分かりましたので報告させて頂きます。

 まず、こちらのページにありました。今回は水戸のご老公様(UpToDate)は興味がなかったようでした。

 There are a couple of problems with nasal cannula: if they are not positioned at the nares, they are useless. Disorientated patients appear to be remarkably successful at dislodging cannula. Secondly, the effectiveness may be disrupted by the pattern of breathing: there appears to be little difference whether the patient is a mouth or a nose breather, but it is preferable if the patient exhales through his/her mouth rather than nose, so the reservoir is maintained.

 日本語にすれば、以下のようになります。

 鼻カニューラには、いくつかの問題点がある。一つ目は、鼻孔にきちんと挿入されていなければ意味がない事である。不穏状態の患者では、頻繁にカニューラを取り外してしまうであろう。もう一つは、呼吸のパターンによって効果が左右される点である。患者が口呼吸か鼻呼吸であるかによる差は殆どないが、患者は鼻呼吸よりも口呼吸(呼気時に)である方が望ましい(鼻腔のリザーバー機能が保たれるため)。

 鼻カニューラの機序?は以下の通りです。

・鼻カニューラから100%酸素が排出される。
・100%酸素が鼻腔内に溜まる(リザーバーとなる)。
・患者が息を吸うと、100%酸素と空気が混じって肺まで到達する。

 例えば、1回換気量が500mlで、呼吸回数が12回/分と言う人がいたとします。通常1回の吸気には1秒かかり、5秒に1回の呼吸なので、4秒は休みです。
 患者さんが息を吸う速度は、500mL/秒つまり30L/分です(本当はもっと複雑ですが)。そこへ1L/分の酸素を流せば、酸素濃度は、(1×1+29×0.21)÷30=23.6%となります。1L/分で酸素を流すと約4%酸素濃度が上昇すると言うのはこれによります。
 鼻呼吸をしている人であれば、息をしていない間に鼻腔に酸素が溜まりますので、もっと上昇するかも知れません。後で出てきますが、鼻から息を吐く人は、溜まった酸素を出してしまいますので、効果が減少するでしょう。
 口呼吸をしている人であれば、上から酸素が流れてくる(鼻腔はすぐ100%酸素で満たされるでしょう)ので全く効果がないとは言えません。

 Nasal High Flowと言う製品もあるようで、これで酸素を30リットル/分!!流すと吸入酸素濃度が100%にもできるそうです。

 この文献(英語です)では、1リットル、2リットル/分で口呼吸、鼻呼吸の人でSpO2に差がなかったと報告しています。

 が、口呼吸では駄目と言う意見ももちろんあります。

 Nasal cannulas should only be used in patients who breathe adequately through their noses.
 鼻カニューラは鼻から適切な呼吸をしている患者にのみ用いるべきである。

 こちらのヤフーの質問コーナー(アメリカ版)にもありました。

 鼻から酸素を投与された場合に最も利益を得るためには、鼻から呼吸をすべきであると言う考えは論理的ですが、医療の専門家ですらこれらの事を充分検討していないので、多くの神話が存在する。
 鼻腔の解剖を考えてみると、鼻腔は背中側でのどと交通があります。鼻腔はそれほど大きなスペースではなく、250ml程度しかありません。その空間に毎分2リットルの水を注ぎ続ける事を考えれば、その空間はすぐに水で満たされる事が理解できますよね?同じ事が毎分2リットルの酸素でも起こります。息を吸うと鼻カニューラから出てきた100%酸素が希釈されます。肺に到達した時には酸素濃度が低下する理由です。

 もし、口呼吸をしていた場合、鼻腔の酸素は鼻の背中側の穴から出てきて、同じように希釈されます。これは1968年にDoctor Eganによって書かれた"Inhalation Therapy" on oxygen therapy(酸素吸入療法)と言う本にも書かれています。年月がたった今でも否定する根拠は存在しません。


 結論としては、鼻カニューラを用いる場合には、息を吸う時には鼻から、吐く時には口からが望ましいでしょうと言う事になりますね。
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oldDr

明快な解説ありがとうございます!
かつては医学書でも、呼吸器内科、外科の本や研修医マニュアルなどには簡単な解説しか記載がなく、私は(医師になってからかなりして)麻酔科の本(シャピロ)を読んではじめて鼻カヌラとマスクの違いを認識しました。
現在はいろいろな教科書にも記載されているようですが。

ところで、高流量酸素投与(ベンチュリー効果を利用したもの)と、高濃度酸素投与を混同している記載を(以前は)よくみかけました。シャピロの本では、換気量より多い気体を与えることができるものが高流量(ベンチュリーマスクなど)で、それ以下は低流量(鼻カヌラや通常のマスク)とされていました。しかし、高濃度とそれ以外(中濃度?低濃度?)の明確な基準はないようです(100%酸素はいけないのですが、90%は?)。人工呼吸管理などでは60%以下にするように勧められていますが、60%は高?中?低?。調べていくとわからなくなります。
COPDの救急搬送に、高流量酸素は悪影響を与えるという文献
「Effect of high flow oxygen on mortality in chronic obstructive pulmonary disease patients in prehospital setting: randomised controlled trial .
Michael A Austin, Karen E Wills, Leigh Blizzard, Eugene H Walters, Richard Wood-Baker
BMJ 341:doi:10.1136/bmj.c5462 (Published 18 October 2010) 」
もあり、まだまだ議論されている分野だと思いました。
by oldDr (2010-11-30 10:13) 

Kim

oldDrさん、コメントありがとうございます。

確かに高濃度と高流量の違いがわからない人いますよね。基礎的な事ほどないがしろにされている事が多いと思います。勉強大変です。

紹介して頂いた文献は読んでみます。ありがとうございました!

by Kim (2010-11-30 11:46) 

ぱっくん

お久しぶり(約5ヶ月?)です。
新米救命士ぱっくんです。
病院研修に行っていて見た光景なのですが、医師や看護師さんが「口呼吸の人の鼻に鼻カニューラを入れても意味がないから」と言って、あいたままの口に鼻カニューラを入れていますが、これはどうなんでしょうか?マスクだと呼気(CO2)が溜まってしまうので、この方法なのでしょうが・・・。どこの病院でもやっていることなんでしょうか?

by ぱっくん (2010-11-30 21:32) 

Kim

ばっくんさん、コメントありがとうございます。

口にカニューラは初めて聞きました。私はああり意味ないけど、、流しておこうか、、みたいな感じで使ってました。

この記事を印刷して見せてあげて下さい(笑)。

by Kim (2010-11-30 21:57) 

ちぇりー

ありがとうございました。
1秒吸ってそのまま・・の間に溜まっている、というのを忘れていました(当然知ってはいましたが
今の職場でマスク3リットルを不思議に思う看護師は皆無で
「実際SAT上がってるから意味があるんじゃない?
細かく考えすぎだよ」と言われ
説明する気力もなくなってしまいました・・。
再来年呼吸療法認定士の試験を受けたいと思っていますが(今年は応募し忘れた)
しっかり勉強して医師にも「おかしいやろ!」と言えるようになりたいです。
腎不全の患者さんにマグミットを出すので
「これって高マグネシウム血症になりませんか?今まで使ったことない」と意見したら
「え?そうなの?初めて聞いた。慎重投与して気をつけろ、っていうだけで実際は使うんじゃない?」と言われ・・
今までワタシがうるさく言われてきたことはなんだったんだろう・・と思ったり・・
でも、研修医上がりの医者は患者さんのところへよく行くので感心しています。
記録もしっかりしてるので。
歳とった医者は病名すら書いてないし
ムンテラしても内容書いてないし最悪デス・・
by ちぇりー (2010-11-30 22:15) 

ぱっくん

早速のご回答ありがとうございます!
初めてですか!?
でも確かに、口呼吸の人で鼻カニューラを鼻から口元に置くと、Spo2が上がったのも見ましたし、これはいい方法だなと思っていました。
エビデンスはなさそうでうが、看護師さんたちの経験からその方法を思いついたのでしょうか。ひとりの看護師さんだけではなく、複数の看護師さんがやっているのを見ると、けっこうどこでもされているのかと思ってしまいましたが、初めてと言われると、この病院の裏技でしょうか。
いつも一緒に救急搬送されてくる患者さんを受け入れる看護師さんに、このことについて話してみたいと思います。いつも忙しそうにしてるので、邪魔にならないように・・・。
by ぱっくん (2010-11-30 22:43) 

Kim

ちぇりーさん、コメントありがとうございます。

腎不全にカマグはいけないと言うのは私も最近まで知りませんでした。

言い方が難しいですが、先生本にこう書いてあるのですが、実際はどうなんでしょうか?みたいにするのが良いかもです。

うるさく言う事は人によって色々です。これ記事にしますね!

合コンには自分よりも恰好いい人を絶対に連れて行け!とうるさく言う人もいれば、良いんじゃない?と言う人もいます。結局は自分の魅力なんだし、合コンなんて何回もあるじゃん、、、と言う人もいますね。それと同じと思います。

by Kim (2010-11-30 23:09) 

Kim

ぱっくんさん、コメントありがとうございます。

私は見た事ありません。患者さんが引っ張って結果的にそうなったのを見た事はあります。固定が難しくないでしょうか?

が、それが間違いとは言えないでしょう。患者さんがその方が快適であれば、有用でしょう。

現場は色々です。しかし、口呼吸でも鼻呼吸でも差があまりないと言うのは知っておくべきでしょうね。是非教えてあげて下さいね。

by Kim (2010-11-30 23:12)