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低体温の心停止患者さんの対応が変わったかも知れません。 [救急専門医試験]

 平成18年に行われた日本救急医学会の専門医試験の問題からです。

問題54 推定60代の男性。1月某日の午前4時頃、工事現場で倒れているところを通行人に発見された。救急隊到着時に意識がなく、自発呼吸と頸動脈拍動も認められなかった。CPRを行いつつ救急車で搬送した。救急外来で心室細動(VF)となり、3回の除細動とアドレナリン(エピネフリン)1mgの静注を行ったがVFは継続している。直腸温は27度。アルコール臭を認める。誤った処置はどれか。2つ選べ。
(a)除細動を繰り返す。
(b)アドレナリン3mgを静注する。
(c)暖めた乳酸リンゲル液を輸液する。
(d)温生理食塩水による腹腔灌流を行う。
(e)PCPS(経皮心肺補助)を行う。
 
 解説はこちらを参照下さい(殆ど同じですが)。

(a)△ 出題当時は×です。除細動は復温するまで繰り返してはいけませんでした。「1回のショックに反応しない場合はそれ以上除細動はせず、再度除細動を試みる前にCPRを継続し、体温が30~32度(86~89.6F)になるまで加温することに専心する(ガイドライン2005日本語版P.175)」とあります。3回も除細動やって良いの?と思いますが、ヨーロッパ蘇生協会(ERC)のガイドラインには「もし心室細動(VF)が検出されたら、ショックを与える。もし3回ショック後も心室細動/心室頻拍(VF/VT)が持続しているならば、核温が30度以上になるまで、それ以上の除細動の試みを遅らせる」とあります。AHAのみ2010年に変更になっています。ERCは2010年も同じ事を書いています。今後出題されたらどうするのでしょう??
(b)× 「初回除細動や初回投薬に反応しなかった場合には、深部体温が30度(86F)を越えて上昇するまで、その後の除細動や追加の薬剤ボーラス投与は延期すべきである(ガイドライン2005日本語版P.175)」とあります(がこれも改訂されています。ERCは2005年と変わりない意見です)。また大量投与は良くありません。
(c)○ 暖かい輸液を入れるのはガイドラインに載っています。が、体温はそれ程上昇しません。日本では乳酸リンゲルが良く使われていますが、ガイドラインには生理食塩水とあります。値段などの問題でしょうし、間違いと言う事はないでしょう。
(d)○ こちらもガイドラインに載っています。
(e)○ こちらもガイドラインに載っています。ERCのガイドラインには「心停止で低体温の患者では、ゆっくりと核体温が増加していく間に循環、酸素化、換気も保たれるため、心肺バイパスが能動的内加温法として勧められる」とあります。

MEMO 2010年ガイドライン
 AHAのガイドラインは、2010年に変更になったようです。
 電気ショックについて
 If VT or VF is present, defibrillation should be attempted. If VT or VF persists after a single shock, the value of deferring subsequent defibrillations until a target temperature is achieved is uncertain. It may be reasonable to perform further defibrillation attempts according to the standard BLS algorithm concurrent with rewarming strategies (Class IIb, LOE C).
 もし心室頻拍や心室細動が存在すれば、電気ショックを試みるべきである。電気ショック後も心室頻拍や心室細動が続いていても、体温が上昇するまで電気ショックを行わない事が正しいかどうかは不明である。加温処置を行いながら、標準的なBLSのアルゴリズムに従い、2回目以降の電気ショックを行う事は妥当である。

 薬剤投与について
 Given the lack of human evidence and relatively small number of animal investigations, the recommendation for administration or withholding of medications is not clear. It may be reasonable to consider administration of a vasopressor during cardiac arrest according to the standard ACLS algorithm concurrent with rewarming strategies (Class IIb, LOE C).
 人でのエビデンスがなく、サンプル数が比較的少ない動物実験の検討しかないが、薬剤を投与すべきか保留すべきかの推奨はできない。加温処置を行いながら、標準的なACLSのアルゴリズムに従い、心停止に血管収縮薬を考慮する事は妥当である。

 ERCは薬剤投与については以下のように述べており、AHAと見解が違います。
 For these reasons, withhold adrenaline and other CPR drugs until the patient has been warmed to a temperature higher than approximately 30. Once 30 has been reached, the intervals between drug doses should be doubled when compared with normothermia intervals.
 この様な(どのようなかは原文を読みましょう)理由により、患者の体温がおよそ30度を超えるまでは、アドレナリンやその他のCPRで使用する薬剤を保留する。体温が30度を超えたら、薬剤の投与間隔を通常の2倍にして投与すべきである。

 日本のガイドラインは雪崩に巻き込まれた場合(ガイドラインに書く必要あるんでしょうか?私の住む県ではまず見ません)の蘇生について書かれているのに、低体温の対応は書いてありませんでした(一次救命処置について少し書いてあるだけです)。
 
 今度試験に出されたらどうするんでしょうね、、、、、困っちゃうな〜。



 あなたはAHA?それともERC?どっちんぐ??



 救急医学会の先生方,是非どっちんぐか教えて下さい(佐賀か鹿児島じゃないですよ)。

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emaniel

kim先生、あけましておめでとうございます。(遅くなりましたが。)
今年もまた読ませて頂きます&お邪魔しますのでよろしくお願いします。

AHAか?ERCか?
ECPRを謳っているJRCがこんな問題を出題する事態、ナンセンスですね。
お国柄AHAをしますけど。(ああ、やっぱり私は日本人。)

385分のCPR後社会復帰した低体温による心肺停止患者という症例検討を見ましたが…。正直、フラストレーションを抱きます。
PCPSやIABP...ectのプライミングにどれだけの時間と能力が必要とされるか。それを見れるDrやNsがどれだけいるか。

現状は厳しいですよね。
by emaniel (2011-01-09 23:34) 

Kim

emanielさん、コメントありがとうございます。

救急医学会とJRCは直接関係ないと思いますが、どちらにしても難しいですよね。答えを公開するのが一番だと思います。

by Kim (2011-01-10 07:00)