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生理食塩水を入れても高ナトリウム血症にはなりません [研修医教育]

 患者さんの急変時の輸液として、「生理食塩水や乳酸リンゲル液を入れると、高ナトリウム血症になる」と言って、緊急時に使用することを良しとしない人がいるそうです。

 ビックリですが、その先生は、輸液についてご専門でないのでしょうから、知らないのは仕方がありません。きっと以前、その先生に、「生理食塩水は絶対ダメだ!」と教えた人がいるんでしょう。その先生がいけませんよね。

 理屈を説明して理解して戴くしかありませんので、ちょっと考えてみます。体重50kgの人に生理食塩水を1リットル入れるとします。こちらのブログにわかりやすく書かれていますが、Adrogue-madiasの補正式と言うのがあるようです。

 点滴後のナトリウム濃度は

 点滴後に細胞外液に含まれるナトリウム÷点滴後の細胞外液量

 です。本当は尿とか便とか不感蒸泄とかも考えなければならないでしょうが、取りあえず緊急時なので無視します。

 点滴後に細胞外液に含まれるナトリウムの量は、もともとあったナトリウム+点滴で入れたナトリウム量になりますので、以下のようになります。

 140×50×0.6+154

 ナトリウムの正常値は140mEq/L、体重50kgの人は水分が体重の60%程度であれば30L近くです。

 点滴後の水分の量は、体重×0.6+点滴の量なので

 50×0.6+1

です。計算すると、ナトリウム濃度は140.45となります。ほとんど変わりませんね。2L入れたとしても140.88です。

 ちなみに乳酸リンゲル液を1L入れると、139.68となります。2Lで139.375です。

 あくまで計算値です(人間の身体はもっと複雑です)が、どちらにしても、ほとんど気にする意義のない値です。ましてや緊急時の患者さんは、ナトリウムが140ではないかも知れません(高齢者はむしろナトリウム低めの人が多いでしょう)し、細胞外液量が足りない事がほとんどです。

 緊急時には細胞外液を用いましょう。生食は高CL性アシドーシスをきたすとか、乳酸リンゲル液は乳酸が高くなるとか、カリウムが入っているからとか、あまり気にする必要はありません。これらについては別に記事にしました。乳酸についてはこちらの記事をご覧ください。

 ちなみに、あくまで緊急時に限った話です。落ち着いた患者さんに生理食塩水や乳酸リンゲル液を点滴するのは、私はお勧めしません。私は維持輸液にこれらの点滴を使うことはありません。

 例えば、乳酸リンゲル液と生理食塩水を交互に使うとどうでしょうか?

 ナトリウム濃度は以下のようにほとんど変化しません!

 それぞれ500ml(1本)ずつ入れた場合、

 (140×50×0.6+130÷2+154÷2)÷(60×0.5+1)=140.1

 それぞれ1リットル(2本)ずつ入れた場合、

 (140×50×0.6+154+130)÷(50×0.6+2)=140.13

 細かいこと気にせず、緊急時は晶質液で問題ありませんね!

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