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緊急時に生理食塩水を数本入れてもアシドーシスにはなりません [医学関連]

 世の中には色々な迷信が存在します。こうすべきだと習ったので、と言う理由以外に理由が見つからない行動です。果たして、それが効果があるのか誰も調べていなかったり、、、、、、

 今回はその中の一つである。「生理食塩水を点滴すると高CL性アシドーシスになる」と言うことについて考えてみましょう。

 昔読んだ輸液の本で、著者のお二人が言っていました。二人とも生理食塩水を入れて酸性になると言う体験をしたことがないと。バケツにHCO3が24mEq/Lと言う液体を作ったとして、そこに液体を入れて半分の濃度にしたら、液体がただの水だろうと、乳酸リンゲルだろうと生理食塩水だろうとHCO3は12mEq/Lとなってアシドーシスになります。だから、生理食塩水を入れたから酸性になるのではないと。以下の本のP.41-45に書かれています。古い本ですが、基本は変わっていないと信じています。

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 塩素がたくさん入ってもアシドーシスにならないとしても、じゃあ希釈性アシドーシスはどうなんだという意見があると思います。UpToDateを読んでみます。後で原文を紹介しますが、色々な緩衝作用により、希釈性アシドーシス単独で著明な代謝性アシドーシスにはならないと書かれています。

 また、こちらのスライドをご覧ください。糖尿病性ケトアシドーシスの時の輸液として、生理食塩水と乳酸リンゲル液を比較した研究を紹介しています。どちらも大きな差は認めず、生理食塩水の方が安いから生理食塩水にしましょうみたいな感じの論文を紹介しています。

 あれ?生理食塩水を入れるとアシドーシスになるという先生方、糖尿病性ケトアシドーシスの時には乳酸リンゲル液使っていますか?生理食塩水ではないですか?糖尿病性ケトアシドーシスの時には、アニオンギャップが増加しているので、塩素を入れない方が良いのではないですか?糖尿病性ケトアシドーシスには生理食塩水をお使いではないですか???

 何故普段は「生理食塩水を使うとアシドーシスになる」と言いながら、糖尿病性ケトアシドーシスの時には生理食塩水を使うのですか?

 教えてください。



 UpToDateの"Approach to the adult with metabolic acidosis(成人の代謝性アシドーシスへのアプローチ)"という文献です。

 希釈性アシドーシス

 希釈性アシドーシスとは、重炭酸や重炭酸に代謝されるような陽イオン塩(乳酸や酢酸)を含まない輸液を大量に投与した場合に、細胞外液が増えて血清重炭酸が低下するためにのみ起こるものである。しかし、細胞内や骨、アルブミンやヘモグロビンなどの塩素イオンと結合しているタンパク質などからの重炭酸の移動により、細胞外液量が増加した事による血清重炭酸イオン値の減少は最小限になる。動物実験ではあるが、生理食塩水で細胞外液量を28%増加させたところ、重炭酸イオンの低下は10%しかなかった。よって、希釈性アシドーシスは、大量のアルカリを含まない輸液を入れなければ、著明な代謝性アシドーシスの原因とはなりにくい。

 と言うことで、生理食塩水をたくさん入れなければ、アシドーシスの原因にはなりません。と言うか、たくさん入れなければ、逆に循環不全でアシドーシスが悪化すると思います。気にせず必要ならば生理食塩水でも乳酸リンゲル液でも、どかっと入れて患者さんを助けましょう。

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たけさん

こちらのブログでははじめまして,です.いつも勉強させて頂いてます.
「臨床医のための輸液問答」,私も持ってます!臨床医ではありませんが・・・
おっしゃる通りだと私も思うのですが,その反面,スチュワートアプローチでは生理食塩液はStrong ion differenceが0ってことでアシドーシスを起こすことになってます.
こちらの論文(Anesthesiology 1999;90:1247-1249)でも生理食塩液6000mL(!)投与でpH7.41→7.28,Clが104→115mEq/L,HCO3が23.9→19.3mEq/Lに低下,一方,乳酸リンゲル液では6000mL投与でもClが104→106,pH等に変化なしという結果です.
http://anesthesiology.pubs.asahq.org/article.aspx?articleid=1946715
また,「急性期ケアにおける輸液管理」(丸山一男著,メディカ出版,2016年)の238頁に「手術では生理食塩液30mL/kg/時間の投与により1時間後にはアシドーシスが発生すると考えてよろしいです.」とあります.
生食は大量投与しなければアシドーシスにならないという結論は同じなんですけど・・なんだかもやもやするのは私が臨床を知らないからですが・・・
by たけさん (2017-11-24 17:47) 

Kim

たけさん、コメントありがとうございます。

大量に輸液を入れなければならない場合は、例えば乳酸リンゲル液を入れて構いません。日本だと生理食塩水が1本150円ぐらいで、乳酸リンゲル液が160円とかというわずかな差です。

ただ、よほどの大きな病院でなければ、救急外来に乳酸リンゲル液は10本ぐらいしか置いてありません。うちの病院はそうです。大量に輸液が必要である患者さんが数名来ていればあっと言う間になくなります。その時にもちろん薬剤部から持ってくるわけですが、急ぐのであれば生理食塩水でも構わないと言うことです。

絶対に乳酸リンゲル液じゃないとダメだ!!生食はアシドーシスになるんだから!と言う先生がたまにいて、そういう事をしなくて良いですよと言う意味です。

どっちみちアシドーシスになる人はなるのですから。

by Kim (2017-11-26 09:13) 

たけさん

今回もお忙しい中,教えていただきありがとうございました.
緊急時には乳酸リンゲル液も生理食塩液もアシドーシスの面で大差ないということですね.
実臨床からの実感を伴ったご回答で,たいへん参考になりました.

by たけさん (2017-11-28 08:08) 

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