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敷居は低くしましょう。大変だけど。 [研修医教育]

 私が学生の時にある病院の先生に伺ったお話です。

 例えば、あなたが脳外科医だったとして、脳腫瘍の治療を一生懸命やりたいと考えたとします。病院内はもちろん、院外にも、脳腫瘍を診ますから、疑われる患者さんは紹介してくださいとお願いします。

 通常それだけでは脳腫瘍の患者さんは増えません。確か、脳腫瘍は1年で人口1万人に1人ぐらいの発生率です。高崎市の人口は37万人ぐらいですので、年間37人の患者さんが発生するはずですが、全部があなたの所には来ません。

 なぜなら、多くの医者は脳腫瘍に興味がないからです。よって、頭痛があると言って病院に来ても、積極的にCTやMRIを撮ったりはしません。よって、手術も出来ないような手遅れの状態になって見つかることもあるでしょう。何でこんなになるまで放置しておいたんだ!と怒っても仕方がありません。脳外科医であるあなたが、貧血や便潜血陽性に興味がないのと同じです。

 だから、脳腫瘍をたくさん診たいと考えたら、頭痛外来というのを始めます。そして、鼻水が出て頭痛があると言うような、明らかに風邪の患者さんでもちゃんと診ます。そのうち脳腫瘍が見つかるでしょうし、あの先生は何でもちゃんと診てくれるからと紹介も来るでしょうし、患者さんの評判も広がり、脳腫瘍ならあの先生となるかも知れません。が、本当に脳外科医が診なければいけない患者さんではない人もたくさん担当しなければなりません。でも、それをしなくて、専門しかしないというのであれば、多くの患者さんは来ないでしょう。

 しかし、専門家と言われる人たちは、なかなかそうしません。もちろんお忙しいんだとは思いますが、だいたいの専門家は敷居が高いです。頭が痛いと訴えているのですが、CTもMRIも異常がないんですと相談すると、それこそが専門家の出番ではないかと思いますが、それはうちじゃないよね、、、、、、、と興味を示してくれない人がいます。お腹を痛がっていて、強い鎮痛剤も使ったのに改善しない、画像も異常がない、、、、、、、、内視鏡をした方が良いと思うのですが状態が悪い、、、、、、、、今から緊急手術をしたいのですが、血圧がメッチャ低くて肺も悪い、、、、、、、これらは全て専門家の出番だと私は思います。が、そんなの何も出来るはずがないと言って関わってくれない医師がいます。それは出来ないでも良いですが、じゃあ後は私が担当しますと何故言えないのでしょうか?

 私は元外科医で、最初の指導医に言われた言葉があります。内科の先生にコンサルトされたら「分かりました。後はこちらでやっておきます。」と言う答え以外はないと言うのです。手術が必要ならば、当然手術をして、その後外科で担当します。手術適応でなければ、そのままの治療を継続すればいい訳で、1日数回回診に行ってカルテを書くだけです。慣れた医者なら(そして手術が必要ないので落ち着いているわけですから)その患者さんにかかる時間は10分程度でしょう。その10分がイヤだから内科で管理をお願いする、、、、、、、、お前はいつからそんな偉い人間になったんだ!?と言う事です。

 そんなの手術できない、そんなの麻酔かけられない、そんなの内視鏡出来るわけがない、そんなの透析回せない。言うのは簡単です。私でも言えますよ。私は何も出来ない救急医ですが、手術できない、麻酔かけられない、内視鏡出来ない、透析回せない、、、、、、、、専門家であるあなたが、私と同じ事言っていて、専門家を名乗って良いのですか???専門的な知識や技術は一体何のために身につけたのですか?死ぬ気で頑張って勉強して、色々な病院でひどい目に遭いながら学んで、休むことに後ろめたさを感じながら学会に行ったり、家族サービスをないがしろにして家族に怒られ、、、、、、そうやって身につけたのは何のためですか?「こんな患者さんには、その技術は使えない」と言うためですか?私でも言えるような言葉を発するために、、、、、、、、難しいけどやってみましょうとは言えないのでしょうか?言えなくても、では、私が担当になりますと言えないのでしょうか?

 そして、そう言う風に敷居を高くしてしまうことで、コンサルトしにくくなり、患者さんへの早期介入が遅れるというリスクを考えていただきたいです。もちろん、必要なのにコンサルトをしない医者にも責任はありますが、コンサルトをする方はすごく気を遣っていると言う事、忘れないようにして欲しいです。

 研修医の先生方は、是非、専門的な知識を身につけると言う事はどういうことか?良く考えていただければ幸いです。


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