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ショック前のCPRは有効か? [CPRの基礎]

 先日救急隊の方と合同のカンファレンスがありました。私も呼んで頂きました。ありがとうございました。

 その中の症例で何度か出てきた言葉に、CPRファーストと言うのがありました(CPRは心肺蘇生の略です)。

 「この患者さんはCPRファーストよりもAEDファーストが良かったんじゃないでしょうか??」

 等と言うやりとりです。今回はこれについて考えてみましょう。ちょっと長文です。

 心肺停止の患者さんに遭遇した場合、AEDあるいはマニュアル除細動器(つまり病院で医師が使う除細動器)があれば、できるだけ早くそれを使うと言うのが原則です。これをshock first(まずショック)と呼びます。日本ではショックファーストあるいは、AEDファーストと呼んでいます。医療従事者でない方は、これ以降を読む必要はありません。AEDが届いたら直ちに使いましょう。

 患者さんが心停止に陥ってから数分間(だいたい4-5分)以上何もされていないなどの場合には、最初にCPRを行ってからショックを行う方が良いと言うのがCPRファーストです。英語ではCPR firstと何故か言わず、Shock fastと呼びます。ショックを早く(でも最初じゃない)という意味なんでしょう。が、日本人はこの二つの英単語(fast、first)を言い分けられませんので、CPRファーストと言うのでしょう。

 まず、これが役に立つのは、心室細動と無脈性心室頻拍のみです。心静止や無脈性電気活動(PEA)には意味がありません。しかし、現場ではAEDか心電図モニターをつけるまで電気ショックが有効な波形かどうかが分かりません。よって助けられる可能性が少しでも高い心室細動になっているのではと考え、ショックが先か、CPRが先かを考えます。

 何故こんな事を考えるかというと、心室細動は色々な種類というか状態があるからです。心室細動の心臓は,イモムシを入れた袋と言われるような感じで(気持ち悪いですね)心筋が無秩序に動いて心筋のエネルギーを無駄に使っています。心筋内に残っているエネルギー量によって3つに分けられています(が、今回は省略します)。

 以前記事にした記憶があるのですが、教室で騒いでいる中学生と考えればよいでしょう。騒いでいるのを放置していれば、そのうち疲れたり、あきたりして寝てしまうでしょう(そうでない場合もあるかも知れませんが)。よって1秒でも早く電気ショック(教室ならば「黙れ!」と言うのと同じです)をする必要があります。
 しかし、時間がたってしまい、生徒達も疲れて寝ているような状態では、黙れ!と言っても黙っているじゃないか,,,,みたいな感じで、意味がありません。実際の心室細動でも心筋内のエネルギーが少ない状態でショックを行っても心拍再開は望めません(心拍が再開するかどうかはショックの成功、不成功とは直接関係ありません)。
 よって、黙れ!と言う前に、例えばまいっちんぐマチ子先生に登場してもらえば、また騒ぎ出します。心筋にも同様なことが言え、それがCPRです。

 心筋にエネルギーが残っていない(心停止から5分以上たっており、CPRが行われていない)場合には、CPRファーストでも良いのでは?と言う事です。

 CoSTRと言う現在の心肺蘇生の元となる文献には以下のようにあります。

 科学的コンセンサス:
 応答時間(覚知-現着)と除細動までの時間が4~5分以上かかる場合、救急救命士や救急医が除細動前に1.5〜3分のCPRを行なうと、院外成人心室細動/無脈性心室頻拍例において、心拍再開率や生存率が改善されることを示した前後比較研究と無作為化試験がある。また、これとは対照的に、同様の院外成人心室細動/無脈性心室頻拍患者において、救急救命士が除細動前に1.5分のCPRを行なったが心拍再開率や生存退院率を改善させなかったという研究もある。心室細動を5分以上持続させた動物実験においては、除細動前のCPR(しばしばエピネフリンが投与されている)が血行動態や生存率を改善した。
 推奨される処置:院外成人の心室細動/無脈性心室頻拍の場合、救急医療サービス(EMS)応答時間(覚知-現着時間)が4〜5分以上ならば、除細動前に1.5〜3分間のCPRを考慮してもよい。院内心停止例に関しては、除細動前のCPRを支持するエビデンスも否定するエビデンスも充分ではない。

 よってアメリカ心臓協会は、以下のようにCPRファーストを考慮しても良いとしています。

 成人患者が院外で心停止を起こし、EMS従事者はそれを目撃していない場合、救助者は心リズムチェックと除細動を行うよりも前に、ある期間(約5サイクルあるいは約2分間)CPRを行ってもかまわない(クラスIIb)。
(AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2005、P.34、中山書店)

 ですが、ヨーロッパ蘇生協議会は以下のように記載しており、推奨しておりません。

除細動前のCPR
 AEDを利用できるならば出来るだけ早く除細動を行うことは、ガイドラインと教育の中では常に鍵となる要素(a key element in guidelines and teaching)であり、VFを救命する上で極めて重要(of paramount importance)であると考えられてきた。

 救急車を呼んで到着するまでの時間が5分を超えた時には、除細動の前にある時間胸骨圧迫を行う(a period of chest compression before defibrillation)と救命率が改善する可能性があることを示唆するエビデンスがあり、この概念は追試されて来た。1つの研究ではこの方法の利点は確認されなかったが、エビデンスの重要性(the weight of evidence)によって、除細動前心停止時間の長い傷病者に対し、除細動前に一定時間の CPRを行うことが支持された。

 これらすべての研究でCPRは救急救命士(paramedics)によって行われ、気管挿管によって気道を確保し、100%酸素が投与された。このような高度の換気は口対口呼吸を行う一般救助者に期待することはできない。第2に、通報から除細動器が使用されるまでの時間が5分以上の場合にのみ、除細動前CPRの利点があるのだが、通常は虚脱からAEDを持った救助隊が来るまでの(経過)時間を正確に知ることはできない(rarely be known with certainty)。第3に、AEDが到着した時にバイスタンダーによって良質なCPRがすでに行われていれば(if good bystander CPR is already in progress)、これ以上、除細動前CPRを続行することが論理的とは考えられない(it does not seem logical)。以上の理由で、本ガイドラインはAEDが使えるならば出来るだけ早くショックをかけることを推奨する。早期に中断のない胸骨圧迫を行うことの重要性が強調される。

 う〜ん、知らなかった、、、、
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yangt3

勉強になりました.
by yangt3 (2010-03-27 12:58) 

Kim

yangt3さん、コメント&nice!ありがとうございます。

参考になり幸いです。これからもよろしくお願いいたします。

by Kim (2010-03-27 14:26) 

さうざんバー

たとえ話も、勉強になりました(^^)
by さうざんバー (2010-03-27 21:16) 

Kim

さうざんバーさん、コメント&nice!ありがとうございます。

たとえ話は学校の先生にはうけた?かもしれませんね(^.^)。

by Kim (2010-03-27 22:49) 

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