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脱腸の手術は必要ないのか? [医学関連]

 鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)という病気があります。鼠径とは足の付け根の辺りのこと。ヘルニアとは位置がおかしくて問題が起こる病気の総称です(腰のヘルニア、脳のヘルニアなどがあります)。腹部のヘルニアは色々あるのですが、最も多いのが鼠径部のヘルニア、中でも鼠径ヘルニアです。腹部のヘルニアは、腹部をおおっている筋肉やその膜(筋膜)などに問題があり、そこから腸などが外に出てきてしまう病気です。

 出てくるだけなら美容上の問題ぐらいでいいんですが、まれに筋膜の穴に腸がはまり込んで抜けなくなることがあります。これを嵌頓と言い、長時間続けば腸が腐ってしまいます。

 よって、腹部のヘルニアは、見つけ次第原則手術というのが一般的です。

 まず小児です。小児のヘルニアでは、自然に治る場合もあり、いきなり手術ではありません。1歳を過ぎるぐらいまで治らなかったら手術を勧めるようです。

 大人の場合には、原則手術です。嵌頓したら緊急手術となります。緊急手術は予定手術に比べて色々な危険が発生することが明らかになっています。また腸が腐ってしまったりすると、メッシュ(今は鼠径ヘルニアの手術には必須と言われています。ちょっと硬い網みたいな物で補強するんです)が使えません。
 手術による危険は、ヘルニアの場合非常に確率が低いですし程度が軽いです。よって手術をしないでおくよりも、手術をする方が危険が少ないと言うことで、手術をすべきと言うことです。

 が、最近手術しなくても良いのではないかと言う意見もあるようです。

 UpToDate "Overview of treatment for inguinal and femoral hernia in adults(成人における鼠径、大腿ヘルニア治療の概要)"より。

 20世紀末に手術をしない方法に関して二つの研究が行われた。どちらもヘルニアの合併症(嵌頓)の頻度が無視出来るほど低かったが、後に手術が必要となるような症状(痛み、不快感)の進行を認めた。症状が発生するまで手術を遅らせるという「罰則」を与えることに意義はない。

 最も大規模な無作為化試験は男性のみを対象に行われたものである。よって、女性の鼠径部ヘルニアに対して、このデータや推奨を適応する場合は注意が必要である。大腿ヘルニアは、解剖学的な理由により、嵌頓の頻度が高いが、無症状あるいは軽度の患者で、経過観察よりも手術の方がいいというデータはない。

 合併症のあるヘルニアや、ヘルニアに関連した症状のある患者のほとんどに手術適応があるが、症状が全くないか軽度の男性の場合、経過観察とすることは合理的である可能性がある。女性は合併症のリスクが高いために、一般的に発見次第手術をすべきである。

 直ちに手術をすることに比較して、経過観察を行うことは、リスクを理解し、症状が発現したら直ちに医療サービスを受ける必要があることが理解出来る、症状が軽度の白人の中年男性の鼠径ヘルニアに対してオプションとして提示出来る。しかし、絞扼のリスクが高い高齢者に対して経過観察を行うことや、緊急手術のリスクに関する十分なデータがない。さらに、上記の研究が若い患者や女性、他の人種、他の型のヘルニアに関して適応出来るかどうかについては定かではない。


 基本的に鼠径ヘルニアは手術が出来る病院へ紹介すべきと思います。経過観察で良いでしょうと言っておいて、嵌頓してから夜中や休日に紹介してくる先生が時々おられますが、、、、、、、同じ事を言うにしても、ちゃんと緊急手術が出来る医師が言うべきだと個人的には思います。今まで医者を22年やって来て、一人だけ鼠径ヘルニア嵌頓で亡くなられた方がいます。たった一人と思うかどうかは、あなた次第です。

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はる

はじめまして!鼠径ヘルニアについて検索して辿り着きました。
コメントの所で質問させて頂いてもよろしいですか?
先日、鼠径ヘルニアの手術をした20代女性です。
手術後に出てた部分は水が溜まった袋で癒着が酷くから子宮を支える筋?を切除したと言われました。
支障はないとの説明だったのですが…本当に大丈夫なのでしょうか?

長々すみません。少し不安で…
by はる (2014-06-29 08:04) 

Kim

はるさん、コメントありがとうございます。

手術後の不安ですね。当然のことです。

おっしゃっているのは子宮円索のことでしょう。鼠径ヘルニアだと思ったが、Nuck水腫だったと言う事でしょうね。詳しいことは書きませんが、ヘルニアと似た病態です。男性で言えば精索水腫や陰嚢水腫と同じものです。

私は今外科を離れているので、古い知識かもしれませんが、女性はほぼ間違いなく、ヘルニア嚢が癒着しているので、一緒に走っている子宮円索を切ります。男性の場合には精管や精巣を栄養する血管が入っていますから切れませんが、女性はほとんど何もしていない組織なので切っても大丈夫です。心配ありませんよ。


by Kim (2014-06-29 13:15) 

はる

回答ありがとうございました?
傷口の上の腹部が腫れて痛いからと心配だったんですが
担当してくださった先生以外にも大丈夫と言ってもらえて安心しました(^^)

本当にありがとうございました?
by はる (2014-06-29 18:21) 

Kim

はるさん、解決して良かったです。

手術をすると、傷口は多少腫れますよ。普通のことです。と言うか腫れなかったら逆に心配です。

あとメッシュという人工の膜を使っていたら、より顕著に腫れます。

数ヶ月すれば腫れは引いてきますのでご安心ください。

by Kim (2014-06-30 07:22) 

70歳

興味深く読ませて頂きました。
ぽこっとした違和感があり、近所の病院に行った所、鼠径ヘルニアでしょうと。総合病院に紹介状書いて頂きました。 本日行ったところ、とりあえず経過観察でいいですよとの事でした。
てっきり手術だと思っていたので、、いいような悪いような。 どう判断されますでしょうか?
by 70歳 (2016-08-22 10:11) 

Kim

70歳さん、コメントありがとうございます。ご心配ですよね。

私は現在外科の診療をしていないので、なんとも言えませんが、昔は見つけ次第手術でした。気になるのでしたら、もう一度その総合病院で相談されるか、別のところへ行かれてみてはいかがでしょうか。

by Kim (2016-08-22 15:58) 

みのるくん

メッシュという人工の膜ではなく、もっと人間の体の一部に同化して補強できるものとかないのでしょうかね?(親父に)手術を勧められて嵌頓になって手遅れになる前にと言われてもそれはそうと分っていても、こんな方法しかないのかちっとも進歩していないようなと、残念な気持ちになります。
by みのるくん (2017-03-28 15:44) 

Kim

みのるくんさん、コメントありがとうございます。

ヘルニアの手術に使う人体に同化するものは現在はありません。が、メッシュは特に害がないような材質で作られています。他の場所にも使われていて、多くの患者さんを救っています。

必要であれば、是非治療を受けられることをお勧めします。

by Kim (2017-03-31 08:27) 

まりりん

53歳女性です。右足付け根部分の鼠経ヘルニアで水腫との診断を受けています。治療には手術が必須とのことで、腹腔鏡手術もあると説明を受けました。私はシリコンやラテックスゴム等に多種類性の化学物質過敏症があり、抗生物質と鎮痛剤にアレルギーを持っています。手術を受けることは、アナフィラキシーショック含め、ものすごく不安があり、メッシュ使用にも抵抗があります。幼少期に左側鼠経ヘルニア手術、産後に子宮脱(現在辛うじて治癒)もあり、手術以外で治癒する方法を模索しながら悩んでおります。
by まりりん (2017-10-13 11:30) 

Kim

お返事遅くなって済みません。基本的に鼠径ヘルニアは手術以外の治療法はありません。

ラテックスアレルギーもあるとなるととても大変でしょうね。点滴の回路にはラテックスが使われているものが多くあります。抗生物質や鎮痛剤のアレルギーではなくラテックスアレルギーかも知れませんね。最近はラテックスフリーの点滴回路もありますよ。

手術にはメッシュを使わない方法もあります。主治医の先生とよく相談されることをお勧めします。

水腫と言うことはNuck水腫でしょうか?それだけでしたら手術は必要ないかも知れませんが、鼠径ヘルニアもあるんですよね。主治医の先生とよく相談されてください!

by Kim (2017-10-17 09:20) 

Kei

高齢者の鼠径ヘルニアについて教えてください。
現在老人ホームに入所中の祖父(92歳)がひどい便秘で、
内科医より下剤の処方を受けながら排便している状況です。
先日鼠径部に膨らみができ、その内科医より鼠径ヘルニアと
診断されました。痛みは無く、手で押すと戻るそうです。
様子を見ましょうと言われていますが、そのままで良いので
しょうか?
高齢なので手術より、バンドなどで対処すべきでしょうか?
とても心配なので、お考えを教えてください。

by Kei (2018-02-25 12:42) 

Kim

Keiさん、コメントありがとうございます。

鼠径ヘルニアで問題となるのは、嵌頓と言って腸がはまり込むことです。直接は便秘とは関係ないと思いますが、便秘だと力が入るので嵌頓しやすいかも知れませんね。

ヘルニアバンドというのは個人的にはお勧めしません。手術をしないのであれば、経過観察で良いでしょう。

嵌頓したら痛みが出てきますので、すぐに外科の医師に診てもらえば問題ないと思います。

診てもらえない環境であれば、手術をしておく方が無難ではないかと思いますが、外科の先生に一度診てもらうのがいいのではないでしょうか?


by Kim (2018-02-26 22:31) 

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