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点滴にブドウ糖を入れるのは何故か? [研修医教育]

 ご飯が食べられない患者さんなどには、3号液と呼ばれる輸液製剤が投与されます。救急科の研修に来られた研修医の先生に、「何故ブドウ糖が、それも5%程度入っているのか?」と質問するのですが、答えられる先生はあまりいません。

 これは研修医の先生が悪いのではなく、医学教育の問題です。卒前教育つまり医学部の教育、それから卒後教育つまり初期研修の両方です。指導医でも知らない人がいますので。私は幸いにして研修医の時に点滴に詳しい先生に教わったので、ちゃんと覚えています。

 知らないことは罪ではないので、今まで顔は怖い(と言われています(T_T))ですが、優しく言葉でお伝えしていた(つもり)のですが、ちゃんと書かれた文献を見つけましたので紹介します。

 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会による日本版重症患者の栄養療法ガイドラインのP.234に書かれています。以下引用です。

 「肝臓で貯蔵されているグリコーゲンは400kcalであり、2日以内に枯渇する(筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは筋肉内でのみ消費される) 。以後、体蛋白を節約し内因性脂肪を燃焼させるには、TCAサイクル中のオキサロ酢酸が必須であり、そのためには、最低限400〜600kcal/day(ブドウ糖100〜150g/day)を投与することで30%の体蛋白の構成成分である糖原性アミノ酸消費が抑制できる。その効果を期待して侵襲時にもブドウ糖で100〜150g/dayの投与が必要とされる。」

 患者さんを絶食にすると、外からブドウ糖が入ってきません。ブドウ糖がなければ生きていけない臓器がいくつかあって(脳、赤血球、副腎髄質だったと思います)、ブドウ糖が入ってこないのであれば、その臓器のためにブドウ糖を作る必要があります。その時に、タンパク質を分解して作ってしまうと、身体が弱ってしまいます。よって、出来るだけタンパク質の分解を少なくする必要があり、その為に最低100g/日のブドウ糖が必要と言うことです。また、この目的のためであれば、ブドウ糖を1日200gl投与しても、蛋白の分解抑制効果は増えるわけではないそうです。

 ブドウ糖1gは4kcalの熱量に相当するので、ブドウ糖を1日100g投与すれば、1日で400kcal投与したことになります。

 5%ブドウ糖溶液は、50g/Lのブドウ糖を含みます。よって、ブドウ糖を5%含んだ溶液を1日2000ml投与すれば、1日100gつまり400kcal投与されます。点滴は1日2000ml程度入れますから、濃度が5%程度になっているというわけです。何故かソリタT3は4.3%と薄めになっています。他に電解質なども入れるため、浸透圧を出来るだけ下げるためにブドウ糖の濃度を下げるのですが、ブドウ糖は出来るだけ5%に近づける努力の結果なのでしょう。
 水分を制限するために、点滴を1500mlとか1000ml/日にする場合には、ブドウ糖をもう少し濃くする必要があるかも知れませんね。その為にソリタT3Gとか、10%ブドウ糖の溶液があるのでしょう。

 噂では3号液などの点滴は日本にしかなく、諸外国ではブドウ糖と生理食塩水などを使って医師が自分で処方を考えるのだそうです。日本は「じゃあ3号液で」「透析患者さんなので4号液で」とか言えば良いので、点滴の組成をどうすべきか?その前に、そもそも、どうやって蘇生を決めればいいのか?を考えなくて済んでしまうので、点滴について勉強しない医師がいる原因の一つになるのかも知れませんね。


日本版 重症患者の栄養療法ガイドライン 総論2016&病態別2017 (J-CCNTG) ダイジェスト版

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 真興交易医書出版部
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 単行本



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よっちち

いつも楽しく読ませていただいています。栃木県の研修医です。5%ブドウ糖の意味は浸透圧を合わせるためだと思っていたのですが、そんな理由があったのですね。勉強になりました。
by よっちち (2018-04-20 16:42) 

Kim

よっちちさん、コメントありがとうございます。

お隣の県ですので、何かの機会にお会いできるかも知れませんね。

浸透圧を合わせる意味ももちろんあると思いますが、蛋白異化を最小限にする目的も大切です!!

なら蛋白を入れたら良いじゃないかと言うことで、アミノフリードとかビーフリードという点滴が売られていますが、有用だというエビデンスには乏しいようです。が、NSTなどでは、アミノ酸を入れるのが常識になりつつありますね。

点滴は結構前から行われている割と古典的な治療な気がしますが、意外と深くて興味深い領域ですよね。

by Kim (2018-04-23 08:18) 

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