So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

自分の働いている環境は非常に恵まれているのだと認識しましょう。 [研修医教育]

 Facebookでお友達になっている救急隊の方が言われていました。軽症と思われたのですが、重要臓器の損傷が疑われた患者さんを、ある三次病院に搬送したら、「なんでうちなの?二次(病院)でいいでしょ!」と嫌みを言われたのだそうです。

 また聞いた話ですが、救急車で転送されてきた患者さんに付き添ってこられた開業医の先生に対して、その病院で働いていた研修医が、「なんでこんな心電図も分かんないの?こんなの救急車で来る必要ないでしょ!」等と言ったそうです。

 その先生たちには、ぜひ救急診療指針の第5版(最近出たばかりです)P.19に書かれていることをしっかり読んでいただきたいです。以下引用します。

「病院前救護の段階において、救急車を呼ぶかどうかの判断や重症度の判断は、患者個人やその家族・同僚などと救急隊に委ねられている。医療従事者でない患者や、十分な検査を行うことが出来ない病院前救護での救急隊による観察では、どうしても病態を重症気味に判断(オーバートリアージ)して搬送されてしまうのは自然の成り行きであり、病院で働く医師や看護師はそれを容認しなければならない。したがって、たいした病状でなくても「何でこんなことで夜中に病院に来るんだ!」とか「なぜこんな患者を三次病院として搬送してくるのだ!」などと、患者やその家族、救急隊に対して叱責するようなことをいってはならない。これは救急医療に従事する際のご法度であり、この一言のために患者やその家族、救急隊との人間関係の崩壊につながりかねない。」

 確かに三次病院の先生の立場も分かります。何でもかんでも三次病院に送られてきたら、重症、あるいは専門治療が必要な患者さんに技術や知識を集中できません。三次病院でなくても対応できる患者さんは二次病院へ運んでもらいたい、そう思うでしょう。

 しかし、三次病院以外でしか働いたことがない者としては、やはり三次病院でなければ対応できない損傷や疾患があったら不安だと言うのがあります。その気持ちも理解していただけたら幸いです。

 これぐらいそっちで診ろよって言われても、同じ言葉を返したくなります。忙しいのはみんな同じです。二次病院が暇だと言うことは決してありません。また、開業医の先生も同じです。みんなそれぞれ忙しいのです。それぞれの立場で全力でがんばっています。

 例えば交通事故で意識レベルが低下していると言う患者さんがいたとします。意識レベルの低下は内科的な疾患かもしれませんし、軽い脳震盪かもしれませんし、高齢者でもともと認知症があって、意識レベルは低下していないのかもしれません。だから一次か二次で問題ないと三次病院に勤めていれば思うでしょう。しかし、あなたはそれの(この場合意識障害)専門であるから一次でも二次でもと思うわけです。三次病院以外で働いていると思います。もし脳出血があったら、そして初期対応を間違って患者さんに不利益を与えてしまったら、うちの病院へ一度来ることで時間的なロスをきたしたら、そもそも、脳に損傷があることを見逃してしまったら?などなど色々な不安があります。

 また、そういった一次、二次病院にはスタッフが少なく、その患者さんだけ診ていればいいと言うことはありません。次々と軽症ではあるのですが、他の患者さんが来るかもしれません。その合間に専門外で重症の可能性がある患者さんを診なければならない不安、、、、、、、採血もレントゲンも撮れないかもしれません。すぐ気軽に相談できる専門医は常勤で勤めていない、、、、、、、、三次病院はそれらのすべてがそろっているわけです。二次病院の46倍は有利でしょう、、、、、たぶん。

 三次病院で働いていると言うことは、それだけで医療従事者の中では激しく有利な環境で働いているのだと言うことをご理解いただければ幸いです。

 もし、本当に三次病院で対応する必要のない状態だと診断された場合、二次病院へ転送すればいいのではないでしょうか?私だったら、三次病院で問題ないと診断されていたり、必要な処置を行われた後の対応であれば、すごく安心できます。実際三次病院から骨盤骨折の止血後当日の患者さんを引き受けたことがありますが、安心して診療が出来ました。

 救急の現場ではオーバートリアージを許容しなければなりません。三次病院に運んで、結果的に何もなかった場合、何でこんな軽症を運んでくるんだ!ではなく、「何もなくてよかったですね!」と言える環境、気持ちを持ちたいですね。


救急診療指針

救急診療指針

  • 作者: 日本救急医学会専門医認定委員会
  • 出版社/メーカー: へるす出版
  • 発売日: 2018/04/01
  • メディア: 単行本




nice!(5)  コメント(2) 
共通テーマ:学問

心肺蘇生の開始は疑ったら開始です!ちゅうちょなく胸を押しましょう! [CPRの基礎]

 相撲のニュースでまた話題になっている心肺蘇生ですが、気になった意見があったので、救急科専門医として述べさせてください。

 心肺停止の診断は難しいです。
 心肺停止ではないか?と思ったら、ちゅうちょなく心肺蘇生を開始してください。
 あなたの対応がもし間違っていたとしても、それによる不利益は、患者さんが受ける利益によって抹消されます。

 相撲のニュースで、女性が土俵に上がったらダメとか、そういうことはここでは述べません。

 あれは心肺停止じゃないから、胸骨圧迫をしちゃダメなんじゃないかとか、心肺停止じゃなかったら胸骨圧迫をしちゃダメだと言う意見がSNSで散見されました。それに対する反論です。

 もう一度言います。

 心肺停止ではないか?と疑ったら、胸を押してください。
 胸を押さない方が罪です。

 以下理由を述べます。

 教科書的には、心肺蘇生は以下のような手順を踏みます。

 倒れている人を見つけた。
 まず現場の安全を確認(安全でなかったら近づいてはなりません)する。
 患者さんに呼びかけたり、体を揺すったりして反応を見ます。
 反応がなければ、助けを呼び、119番通報をします。
 正常な呼吸をしているかどうかを見ます。
 正常な呼吸ではないと考えたら、直ちに胸骨圧迫から心肺蘇生を開始します。
 救急隊が来るまで、あるいは、患者さんがやめてくれと言う(ことはめったにありません。専門である私でも26年間で1回しかありません)まで続ける。

 現場の安全はぜひ守ってください。不安があれば、助けに行かないでください。

 次に、患者さんが心肺停止になっているかを判断することですが、これは、医療従事者でも非常に難しいものです。例えば、正常な呼吸ではない患者さんを見てもらい、正常かどうかを判定してもらったら、正しく判定できた医療従事者は2割ぐらいしかいなかったと言うデータがあります。脈拍があるかどうかを見ることに至っては、正確な判断はもっともっと難しいです。よって、最近のガイドラインでは、脈拍を触れなくて良いことになっています。脈拍を触れた場合も、確実に脈が触れると思った場合以外は胸骨圧迫を開始します。

救急はオーバートリアージです。


nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

ビーフリード、KCLは遮光の必要ありません。 [医学関連]

 病院で点滴をしている人を見ると、オレンジ色や黒色のカバーがかけてある人がいます。なんの目的なんだろう?と思ったことはありませんか?

 あれは光によって点滴の中に含まれている薬剤が失活するのを防いでいるのです。病院によっては、そういった薬は夜に点滴をするなどの対応をしている場合もあります。決して点滴の中身を見られたら困るからではありません。

 ある方から聞いたのですが、以前勤めていた病院でビーフリードを遮光していたので、遮光を行ったところ、遮光は不要だと言われたとのことです。どっちが正しいのでしょうか???

 こちらのサイトによれば、ビタミンの多くは光で失活します。しかし、ビタミンB1は比較的光に強いようです。

 ビーフリードは、ビタミンとしては、ビタミンB1しか入っていないので、遮光が必要ないのだそうです。保存は長期にわたるので、紫外線をカットする袋が使われているそうです。1週間ぐらい光に当てていると10%ぐらい効果が低下するんだそうです。
 しかし、通常の使用では遮光してもしなくてもあまり変わりはないとのことです。通常開封してから24時間ぐらいで使ってしまいますよね。

KCLも遮光が必要ないって本当?


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

ビリルビンだけ上昇している患者さんが来た場合どうするか? [医学関連]

 多くの病院で血液検査はセットになっています。色々な検査項目を一つずつ必要性を検討した上でオーダーするのが本当は正しいのですが、そうすると知らない間に色々たくさんオーダーしてしまいます。100円ショップでついつい買い物をしてしまうのと同じと言ったら怒られるでしょうか。

 一度にたくさん検査をオーダーすると一定数以上の検査は査定されてしまいます。簡単に言えば、病院が損してしまいます。よって、多くの病院で、入院セット、胸痛セット、外科緊急オペセット、整形外科手術セットなどと言うのがあって、出来るだけ病院が損しない組み合わせが決められています。

 そうすると、特に必要でない検査がオーダーされてしまい、意外な結果が得られることがあり、困ってしまうことも多いです。なので、必要のない検査はすべきではありません。が、現場はいろいろなので、、、、、、、、

 その中で、時々ビリルビンだけが高いと言う人に出会います。知っていれば、「ああ、あれか」と思えますが、あれを知らないと「ビリルビンが高い!どうしよう!?」と焦ってしまうかもしれません。今回はそのことについて勉強しましょう。

 救急外来に来られる患者さんの多くは循環血液量減少(hypovolemia)、あるいは脱水(dehydration)のことが多いです。体調が悪くて食べられなかったり、水分もとれなかったりするからです。心房細動の頻拍発作の患者さんの8割は循環血液両減少を伴っていると言うデータもあるぐらいです。

 ジルベール症候群と言う病気があります。英語ではGilbert症候群と書きます。フランス人らしいのでギルバートではなく、ジルベールと読むようです。この病気の人は、絶食になったり激しい運動をしたりするとビリルビン(間接ビリルビンが主体)が上昇するようです。人口の1割程度おられるそうですので、結構頻度が高いです。

 この病気は特に治療は不要で、救急外来でビリルビンだけが高い患者さんがいたら、この病気ではないかと考えれば、少し安心できるのではないでしょうか。問診で最終食事を必ず聞きますので、昨日の夜から何も食べていませんと言う病歴が得られれば、さらにその診断の可能性が上昇しますね!

 もちろん、念のため精査が必要かもしれませんので、そのあたりは慎重に検討が必要ですね。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:学問